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近代科学を切開する

   

科学の限界②~証明できる面だけを抜き出す

「自然現象の中から、科学が取り扱い得る面だけを抜き出して、その面に当てはまるべき学問である。」
「すべての法則には、例外がある。そして、科学が進歩するということは、この例外の範囲をできるだけ縮めていくことである。」
「自然科学というものは、自然のすべてを知っている、あるいは知るべき学問ではない。自然現象の中から、科学が取り扱い得る面だけを抜き出して、その面に当てはまるべき学問である。」

結局、科学とは私権原理,市場社会の枠内での学問であり、豊かさや利益を求めて都合よく切り取る学問なのではないか。
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中谷宇吉郎氏『科学の方法』(岩波新書、1958)からの抜粋
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~続き

【「幽霊」が科学の対象にならない理由】

幽霊は科学の対象になるか、といえば、誰でも一言の下に、否というであろう。そして現在の科学では、幽霊は対象として取り上げられていない。

多くの人が幽霊を見たからという理由で、これは再現可能であるといえるか。少なくともその時代としては、科学の対象となり得たものであったかというと、それはなり得なかったものである。

再現可能というのは、必要な場合に、必要な手段をとったならば、再びそれを出現させることができるという確信が得られるということなのである。幽霊はそれを再現させる方法について、確信が得られない。希土元素のようなものは、めったに見られないし、またほとんどの人が一生見ることのないものであるが、今日の科学の示す学理に従って、こういう順序を経たならば見ることができる、という確信がもてる。幽霊はいくら大勢の人が見たにしても、どういう手段を用い、どういうことをしたならば、必要な時に必要なところで幽霊を見ることができるのか、あるいはどういう条件の時ならば、見えるはずだという確信をもつことができない。すなわち幽霊というものは、現在の科学が自然界についてもっている認識とは、性質の異なるものである。それで幽霊は科学の対象にならないのである。

【科学と統計】

科学は統計の学問といえるのである。

科学が統計の学問であるとすれば、すべての法則には、例外がある。そして、科学が進歩するということは、この例外の範囲をできるだけ縮めていくことである。同時に科学はこの例外の影響が小さい方面に向かって進歩していくのである。再現可能の原則が、近似的にもあてはまらない方面は、科学にとっては不向きな面である。

以上のような見方をすると、たとえば人生論などは、もちろん科学が取扱うべき問題ではない。

【科学万能主義について】

問題の種類によっては、もっと簡単な自然現象でも、科学が取り上げ得ない問題がある。これは科学が無力であるからではなく、科学が取り上げるには、場ちがいの問題なのである。自然科学というものは、自然のすべてを知っている、あるいは知るべき学問ではない。自然現象の中から、科学が取り扱い得る面だけを抜き出して、その面に当てはまるべき学問である。そういうことを知っておれば、いわゆる科学万能的な考え方に陥る心配はない。科学の内容をよく知らない人の方が、かえって科学の力を過大評価する傾向があるが、それは科学の限界がよくわかっていないからである。

科学というものには、本来限界があって、広い意味での再現可能の現象を、自然界から抜き出して、それを統計的に究明していく、そういう性質の学問なのである。

【「科学革命」について】

科学がいろいろと自然の実態を見ていくうちに、ある法則を新しく見つけたとする。その方が、従来の法則よりも、もっと広い範囲にわたって、現象の説明に役立ち、また新しい研究の緒口を与えてくれれば、それはすぐれた法則である。しかし従来のものが、にせものだったと分かって、今度はほんものが出てきたというのではない。もしそういうものだとすれば、今はほんものだと思っているものも、また次に新しい発見があれば、これもまたにせものだったということになる。ほんものがにせものに変わるのはおかしい。これは、ほんものとかにせものとかいう話ではないのである。

アインシュタインの相対性原理が出て、ニュートン力学がくつがえされた、というような記事が、よう新聞や雑誌に出ることがある。そういういい方をすると、いかにもニュートン力学はまちがっていたのであって、アインシュタインの相対性原理による力学がほんとうである、というような印象を受ける。

ニュートン力学では説明のできなかった細かいこと、たとえば水星の軌道のごくわずかな変動とか、重力の場による光線の彎曲とかいう現象が、アインシュタインの相対性理論では解けた。そういう点で、相対性理論はすぐれているのであるが、しからばニュートン力学は全然嘘で、アインシュタインの理論がほんとうかといえば、決してそうではない。

アインシュタインの相対性理論が出ても、日蝕の観測は、依然としてニュートン力学で全部計算している。そしてそれがぴったりと実際の観測に合うのである。

【「法則」について】

自然界には、ほんとうの法則が埋もれていて、宝探しをしている人間が、いろいろ探しているうちに、そのものずばりにぶつかって、それをつかまえたというふうに、考えてもよさそうにも思える。しかしよく考えてみると、ほんとうはそうではないのである。

法則があるということは証明できることではないので、法則があると仮定して組立てたものが科学なのである。
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(引用以上)





小平健介
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