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近代科学を切開する

   

ホワイトサンズUFO搭乗事件その7(ダニエル・フライ)

船体の頂上からシュッというような、呟く様な音が聞こえた。私はその音の小さいのに驚いた。十五秒間でこの大きさの船体を空気で満たせる程の大きな船倉ならば、凄く大きな音が出る筈であるからだ。そこでこの船体は殆ど防音になっていることに気づいた。しかも吸い込まれる空気の音の殆どは船体の内部で発するのであろうから、外には殆ど聞こえないのだろう。
 すると船体表面からカチッという音が一回だけ聞こえた。小さな音だが鋭くて、シングルーアームーリレーまたは小型ソレノイドの作動の為に起こるような音である。
 見ていると、その内に船体の左側の一部分が数インチ程引っ込んで横に動き、船体の壁の中に消えた。すると高さ約五フィート、幅三フィートのタマゴ型の入口が現われたのである。私はその入口の方へ歩み寄って、頭を少しかがめながら入口の中へ入って行った。勿論船体の湾曲の為に私の足はまだ地面にあったが、頭は中へ入っていた。
 覗き込んで見た乗員室は船体の小部分を占めているにすぎない。奥行き約九フィート、幅は七フィートの部屋だが、床は地面上約十六インチの所にあって、天井は床から六フィートを少し越える高さにある。壁は僅かに湾曲して、壁と壁との接合点は斜めになっているので鋭い角は無い。勿論私に最も近い角ば船体そのものであり、内外に同じように湾曲している。この壁は約四インチの厚さがあり、ドアがこの壁の中に引き込まれたのである。この部屋には四つのイスがあるが、それは地球の近代的な"身体にぴったり合うイス"に良く似ている。ただし地球の物よりやや小型である。各イスは私が立っている入口に向かっていて、部屋の中央に二つずつ二列に並んでいる。イス類と両壁の間には通路ができている。
 後ろの壁の中央の天井と接する所に管とレンズの付いた箱のような物があるが、これは小型映写機に似ている。しかしフィルムのスプールやその他の可動部分は見あたらない。このレンズから光が出ていた。映写機から出るような光線ではなく散光状の輝きだが、別段強烈ではなく、しかも心地良く眺めるのに十分な光量を放っている。
 このイスと照明が無かったらガランとした金属製の部屋に過ぎないが、これらが唯一の器具であるようだった。「これはどう見ても招待用の部屋じゃないな。まるで独房だ」と私は思った。
 「前にも言ったように、単調な部屋だがイスは座り心地がいいんだ。乗りたければ中へ入って座りなさい。余り時間が無いんだ」と声が言った。
 殆ど自動的に私はキャビンの床に足を踏み入れてイスの一つに向かった。座る前にカチッという音がして、背後の壁の中からドアーが滑り出始めた。本能的に私はうしろの広々とした砂漠の安全な場所へ飛び出ようとするかのように半分ふり向いたが、ドアは既に閉まっていた。もしこれがワナだとすると私はもうその中に閉じ込められている。逃れられないワナに対してもがいても無益だ。
 「何処へ行きたいかね?」とまた声が響いてきた。今度は私の傍から聞こえるのではなく、寧ろ身体の内部から響いてくるような感じがする。まるで自分が喋っている言葉を聞いているかの様だ。
 「君の持ち時間内に何処まで連れて行ってくれるのか見当が付かない。おまけにこの部屋には窓が無いので何処へ行こうと構わないよ。僕には何も見えないんだからね」
 「君は見ることが出来るんだよ」と返答があって「少なくとも夜間に飛行機から見れるほどには見えるんだ。此方の勧めを受け入れてもらえれば、君をニューヨーク市へ案内して約三十分間でここへ連れて帰ってあげよう。約二十マイルの上空から見るニューヨークの夜景は、この地球上で最も印象的な光景だ」
 「ニューヨークヘーーーそして三十分間でーー帰って来る!」私は言った。「そうなると時速八千マイルになるぞ!一体どうやってこんな宇宙船にそれほどのエネルギーが出せるんだ? このイスには安全ベルトも付いていないじゃないか!」
 「君は加速度から悪影響を受けることはない。実際には加速度というものを全然感じないだろう。兎に角座りなさい。発進させるから。飛行中に何か分からないことが有ったら説明してあげよう」
 私はドアーに最も近い左前側の座席に座ったが、それが実に座り心地の良いものであることを知った。作られた材料はビュライトのカバーを付けたフォームラバーのように感じられたが、外側のカバーには縫目や繋ぎ目が無ければならないのに、そんな物が無い所を見ると、材質が何であるにせよ、多分一回だけの工程で型にはめて作ったものだろう。
 するとまた声が聞こえてきた。「キャビンの照明を消してビューイングービームをつけよう」
 瞬間、室内は真暗になった。そして映写機のような物が再び作動し始めた。今度は散光ではなく、映画またはスライド映写機のようなビーム(光線)なのである。このビームは可視スペクトルの最上端は濃い紫色である。これがドアーの部分に広がった。このドアは最初のときのように壁の中には入り込まないで、ただ存在しなくなったのである。少なくとも見た目には無くなったのだ。まるで極上の板ガラスか澄んだ窓を通して見ているような気がする。



千田祐介
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