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近代科学を切開する

   

ホワイトサンズUFO搭乗事件その3(ダニエル・フライ)

私は多年ロケットやミサイル開発の分野で働いてきたし、ホワイトサンズでの仕事や諸関係などに寄って、航空機分野の開発の殆どに精通していると思っている。しかし今眼前にはかつて聞いたことのないほどに進歩した飛行隊があるので、初めてキリンを見て「よく見たけれども信じられない」と言った山奥の農夫のような気持ちになっていた。

「もしソ連がこんな飛行物体を持っているのなら、神よアメリカを助けたまえ!」というのが私の最初の意識的な考えであったが、そのうちどうやらこれはソ連やその他の如何なる国から来た物体ではないということに気付いてきた。

誰がこの物を作ったにせよ、その人は地球の最高の物理学者がやっと夢想し始めたばかりの多くの問題を解決しているからである。

 この物体の作動には音を伴わない。プロペラの音も無いし、推力を生じさせる為にノズルから噴射される白熱ガスの閃光も轟音も無い。天空の彼方から静かにやって来て地上に音もなく着陸したのだ。多分それが解答なのだろう。物体は私が最初に見た時からずっと降下を続けていた。ただ滑空していただけなのだろう。

しかし着陸する前にそれは時速数マイルに減速し、落下の形跡を示さなかった。これはヘリコプターまたは空気より軽いものしかやれないが、この物体にはプロペラの羽根は全然ないし、地上に落ち着いた時にその下でヤブがぺしゃんこになった事実は、物体が空気より軽い物でなかったことを決定的に示している。これが何であるにせよ、他にどんなことがやれるにせよ、物体はニュートンの最もよく知られた法則に対して確かにいたずらをしたのである。

 以上の事柄が心中に浮かんでいた間に、ふと自分が無意識に物体の方へ接近していたことに気づいた。私は英雄ではないし、今までもただの人間だったのだ。全く本能的に私は自分とこの未知の物体間の距離をできるだけ大きく保つのだぞと叫んでいた。

ところが具合の悪いことに私はいつも酷い好奇心に祟られて来た人間であったし、好奇心の対象が科学的な性質のもので、特に科学上重要な発達をとげた物であるときは、その好奇心が気違いじみてきてあらゆる理性を吹き飛ばしてしまうのである。

 私は物体から二・三フィート以内に接近して、ゆっくりと周囲を歩き始めた。それは空中に見られたとおりの球体で、頂上と底部がかなり平たくて、高さ約4メートル80センチ、横の長さが約9メートル、周囲の縁の高さが地上約2メートル10センチある。

垂直軸から45度以内の角度で下から見ると灰皿の形のように湾曲しているが、実際はソース皿の上にスープ皿を逆さに重ねたような形である。

最初空中に見えた時に現れていた濃紺色はもう消滅していた。ただの磨かれた銀色の金属らしい表面を呈していて、極微かな紫の玉虫色を帯びているように思われる。物体の周囲を一周したが、入り口や縫い目などは見当たらない。内部に人がいるとすれば頂上か底部から出入りするに違いないと思った。

 状況を調べるために私は立ち止まった。これからどうすればよいか。墓地へ帰って物体の出現を報告するか。最初そうするのが筋道に適っているように思われたが、別な考えが起こってきた。基地へ帰って上司を見つけて他の人たちと引き返すには少なくとも45分はかかるだろう。そのうちに物体が逃げてしまったらどうすればよいか。ぺしゃんこになった草むらが証拠として残るだけだ。そんなことで誰が信じてくれるだろう。

誰かが信じてくれたとしても、認めてくれる人は居ないだろう。空中を飛ぶ不可解な物体の目撃をうっかり洩らしたばかりに嘲笑を浴びせられた例を私は読んでよく知っている。物体が着陸するのを見て手で触れるほどに接近したのに、ぺしゃんこになった草むら以外に証拠がないということになれば、目撃者の運命は謂わずと知れたことである。

こう考えてふと気がついた。数分間物体に触れるほどに接近していながら、実はまだ手で触っていなかったのだ。多分触感によって物体が作られた材料のことで何かが分かるかもしれない。とにかくその温度は分かるはずだ。私は進み出て滑らかな金属に指の先をこわごわと当ててみた。気温よりも数度高めだが、信じられないほどに滑らかである。

その滑らかさを言葉で表すのは難しい。薄い石けん水で濡れた大きな真珠の表面に指を滑らせれば、私がその金属に触った時に感じたのとやや似たような感じがするかもしれない。手の平で金属を叩いてみると、指先や手の平の下部に、微かながらも確かにくすぐったい感じがする。

 すると傍らの空中からきびきびした声が流れてきた。
「船体に触らない方が良いよ。まだ熱いから!」 続く。



千田祐介
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